ベリス・メルセス宣教修道女会

かすかな風が吹きはじめ
油照りが少しやわらいで
今年もなつかしい花に出会いました
人の世の淋しさの中で
崇高な想いを漂わせる野牡丹
天地一杯の豊かな恵みを受けて
巡りくる季節の中
紫紺の花は
せつないほどに鮮やかに
ひとつの命を輝かせます

一輪の花の素直さと優しさ
この世の不可能なことを
耐えながら心にとめて
生活の中の悲しみや苦しみも
土の中から澱まで吸い上げて
これ程深い色になるのでしょうか
そっとそばに佇むだけで
心をいやしてくれる花

流れる雲の
合間に広がる青空の下で
人の想いをはるかに越えて
ただ美しくそして静かに
野牡丹は一日の命を
はらりと潔く散っていきます

私の心の池からも
玲瓏と散っていきます