Read More安部志保子 恵の詩, …睡 蓮人里はなれた大きな池で水面に浮かぶ丸い葉の間からわずかに首を出して白 桃 赤 黄と今を綺麗に咲いている 清純な空気を放ちながら風が水面を渡れば風のうたを雲が影をうつせば雲のうたを明るく花の精がうたっている 熱い日差しの中はるかな天井のサイク...
Read More安部志保子 恵の詩, …朝 顔青みがかった藍色の朝顔が今朝は五つも咲いておはよう おはようと呼びかけています夏風邪をひいて萎えていた心と体に花のエールが眩しい 白い蕚から藍色の絞り出したようなすがすがしい花きょう一日の命のかぎり世に美しさを心が伝わってきます 花のあいだ...
Read More安部志保子 恵の詩, …チューリップ 一枚一枚よりそってこんもりとうつわを作っています一列に並んで風にはげまされて太陽になぐさめられて赤く 白く 黄色に自分に合った色を一心につくりだしています ほら透きとおった色の中から光があふれているのでしょう
Read More安部志保子 恵の詩, …夏の終わり小さな中庭に立つと風がひそかに吹いてくる夏を連れ去っていくかすかな風が吹いている 桜の葉が数えられるほどに黄色くなり夕日を受けて金色に輝き始める ツクツクボウシが命のかぎりをぶっつけて夏の終わりを告げているその勇ましい声に取り縋るすべもなく
Read More安部志保子 恵の詩, …紫紫紺牡丹かすかな風が吹きはじめ油照りが少しやわらいで今年もなつかしい花に出会いました人の世の淋しさの中で崇高な想いを漂わせる野牡丹天地一杯の豊かな恵みを受けて巡りくる季節の中紫紺の花はせつないほどに鮮やかにひとつの命を輝かせます 一輪の花の素直さと...
Read More安部志保子 恵の詩, …木蓮ゆるい坂道の側の家入口に木蓮のプランターがあって今日を選んで咲いた命涼しげに白い花が二つ 暑さに負けて郵便局を明日にのばしたら出会えなかった小さな花朝ひらき夕べにしぼむ一日花束の間に散ってゆくはかなさが木蓮の命を尊いものにしている暑さにうだ...