Read More安部志保子 恵の詩, …ありがとう降りつづく雨に心が淋しい日がある無性に父が懐かしく記憶の海を漂いながらみつめる紫陽花の花あかり折々の花の中にはせつないほどに父の想い出が満ちている年月と共に家の中から父の気記が消えてゆく母の入誂が拍車をかけ仏壇の正酒の小瓶も見られなくなって...
Read More安部志保子 恵の詩, …月 光六才 北朝鮮で月の中で兎が餅をつきかぐや姫が天に昇っていった美しく明かるく輝いていた満月十ニ才 引揚道中の野宿で夜露に湿った草の間からもう歩けない死んでもいいと涙の一歩手前で見た白い月十八才日本で杉皮の屋根の透き間から無性に泣きたいような心...
Read More安部志保子 恵の詩, …思い出小学生の頃宿題はいつも兄が手伝ってくれたある冬休みに兄とケンカして工作の宿超を手伝ってくれなかった不器用な私は貯金箱を作ってもグライダーを作ってもいい点がもらえたのは兄のおかげだった それでも一人でできると頑張って御飯の中に砂糖を入れて練り...
Read More安部志保子 恵の詩, …恵み恵み1 私の心の中にかくれた泉があって絶えまなく湧いてくる詩嵐が吹いても日照が続いても泉のほとりが汚れていてもひっそりと湧きつづける「旧約時代にサレプタの寡婦に粉と油が尽きなかったように」数えきれない平凡なことの中に生きる喜びをもたらして瀼...
Read More安部志保子 恵の詩, …大人の心が水上勉さんの言葉に自分は地べたの石になっていたい黙って石になっていてけつまづかせてやりたいけつまずけば足が痛く何ほどか我に返るきっかけとなりはせぬかと現代を生きる私逹は石にけつまずかなければ自分のしていることが判らない目分の進む道が見わけら...
Read More安部志保子 恵の詩, …夏の日の望み坂村真民さんは私は千の仏像も作ることができないだから せめて干の詩を作って捧げたいと思うと 詩っておられる千編の詩とは聞いただけでも目がくらむ毎月一編の詩が締め切り日にやっと間に合う私の詩だからそれでも私は望んで居るやっと生まれたわずかな詩...
Read More安部志保子 恵の詩, …人は1人はこの世に生れる時ひとつの種をいただいてくる誰にも見えない小さな花の種を両手にしっかりにぎりしめて そなえられた環境の中で人が生きるのは小さな種を育てることどんな花を咲かせるのでしょうどんな色の花でしょうどんな香りを放つのでしょう生涯をか...
Read More安部志保子 恵の詩, …人は2出会い……人は生れる時両親を選ぶことはできない人はなにに望みを託してなにをつかむのでしょう別れ……人は両親と別れる時なんの相談もなく奪われてしまう人はそこになにを求めなにを失うのでしょう 人は出会いそして別れ哀しみの眼にうつる最色はなぜ美し...
Read More安部志保子 恵の詩, …小さな命③何かが視野をかすめたような気がしてベランダを見た一羽の雀がとまっていた.'(都会の雀はスリムだね)ステンレスの手すりが似合っている やっと見つけたクーラーから出る水滴にくちばしをつけてまさに雀の涙のよう浅い流れの水を口にふくんだ雀小さな頑を...
Read More安部志保子 恵の詩, …潮の流れに今朝私の胸に剌さった言葉がヒリヒリと心のひだにくいこんでくるさりげなく受け流すにはあまりに弱い私だから冬の海を見に行った 珍らしく静かな日本海 鈍色(にびいろ)の海に点々と浮ぶ島空も海もひとつになって.はるかかなたの水平線白い小さな波のうね...
Read More安部志保子 恵の詩, …市井の福音新聞の川柳の中からひるった一句思い出す度にほほえましく喜びが湧いてくる 「あれ持って来いと言えば 女房あれを持ってくる」 長い桔婚生活を通して少々言葉が足りなくても互いに通じるものが生れていて気持の優しさが空気のように漂っている そこに辿り...
Read More安部志保子 恵の詩, …流れていく時が休みなく流れていく傘寿をすぎるとザアザアと音をたてて流れていくあれもこれもみんな流れにまかせてきたけれどここらあたりでエイ!と方向をかえて流れてみたい気もしている 不順な天候も思いがけない天災も流れにのまれてとけこんでいく気の遠くなるよ...