人はこの世に生れる時
ひとつの種をいただいてくる
誰にも見えない
小さな花の種を
両手にしっかりにぎりしめて
そなえられた環境の中で
人が生きるのは
小さな種を育てること
どんな花を咲かせるのでしょう
どんな色の花でしょう
どんな香りを放つのでしょう
生涯をかけて
大切に心をこめて
脇目もふらずに育てる花
誰にはめられるためでもなく
この世にほんの少しの
やさしさを添え
命のかぎり
香りつづけているということ
ただひとつの花が
咲き極まって
人知れずに散ってゆく時
小さな種をくださったお方の前に
人は空の手で御前に出るでしょう
両手をいっぱいに開いて
私も
からの手で……