降りつづく雨に
心が淋しい日がある
無性に父が懐かしく
記憶の海を
漂いながらみつめる
紫陽花の花あかり
折々の花の中には
せつないほどに
父の想い出が満ちている
年月と共に家の中から
父の気記が消えてゆく
母の入誂が拍車をかけ
仏壇の正酒の小瓶も
見られなくなって
またひとつーー
さりげない日常に
ふと出会った今日の花に
花を目出度
父の顔が見えてくる
一人の生はささやかで
生きるのも死ぬのも一度だけ
あやめが咲いて
紫陽花が咲いて
想い出の中で父に出会う
四季の巡りに
とどこおりなく
命に輝く花を
贈ってくださる
神様に
どんなお礼を
差し上あげましょうか